空の果て-End of the sky- 薬編:思考テキスト ボクは液体の中で目が覚めた。 水色が瞼の全体を覆う 不思議と気持ちが軽い ボクはなぜこんな場所にいるのだろう しかし、そんなことはどうだってよくなってきた できればこの液体の中で一生を終えたい この液体の中で息絶えたいとなぜか思ってしまう ・・・。 しばらくして液体が揺らいだ 体全体が液体と一体化していて、僕の体も自然と揺らぐ 揺らぐ世界揺らぐ視界揺らぐこの気持ち 視界の中央部分から手が降り注ぐ その手はまるでなにかを探してるのかのごとくボクをめざしている でもボクは捕まえられない ボクは液体なのだから ただ、その手のなかで ひとつだけ白い手を見つけた 何故かボクはその手に引っ張られる 視界が真っ白に埋められて いままで青く染められていたボクの視界が 白に揺らいでいった 白い世界の中にひとつだけ ドアノブのついた扉が存在した ドアノブをひねると簡単にあく 扉を開いて世界の向こう側を覗くと そこには"外"が存在した "外" 緑色に染まった"外"があり その中央に赤い道が走っていた ボクは道の向こう側へ 駆け抜けた 急に道がなくなった ボクは緑の世界へと落ちていく ・・・・。 ・・・。 ・・。 ・。 そんな夢を見た。 第1章「仕事」  その日は雨がどしゃぶりで、最悪にテンションの下がる1日だった。 けだるい授業を昼間に抜け出して、学校から出てきても、意味がないとすぐにわかった。 雨は余計だるくなる。 家までもうちょっと走ればつきそうなくらいの距離のところにあるパン屋で 僕は結局、雨宿りをし始めたところだった。 携帯の着信音が僕を呼ぶ。 「まだ誰にも教えてないんだけどな。」 昨日買って、今朝取ってきた新品の携帯だ。 引継ぎなど、金のかかることは嫌いなので、自分はいつもパソコンでデータを移し返す。 今は、当然、何もデータの入っていない携帯なはずだ。 電話がかかってくるなど、間違い電話以外ありえない。 ・・・。 電話が切れるまでまって数十分。 電話は切れることなく、なり続ける。 もういい加減、うるさいので、電話に出ることにした。 「はい。もしもし。小沢ですけど・・・。」 「よう。小沢。元気か?」 「え?ええ。まぁ。」 「ところで、君に仕事を頼みたいんだが。」 「は?い、いや、その前にどちら様なんですか?」 「ああ、まぁ、気にするな。」 「は、はぁ・・・。」 「ところで、仕事なんだが。そこに電話ボックスがあるだろう?」 僕は左右を見回すが電話ボックスなど存在しない。 「今の時代に電話ボックスなんか・・・。」 「ちがう。そのパン屋の裏の通りを見てみろ。あるだろう?」 言われたとおり裏のとおりを見てみる。 そこは暗く、家の間にできた"隙間"のようなとおりだった。 道の端にパン屋の古くなった機材や、つぼやらが、無残に放置されている。 そこに不自然に電話ボックスが置かれていた。 「ほら、あっただろう?」 くくっと笑う声が聞こえる。薄気味悪い声にも聞こえた。 「とりあえず、その電話ボックスに入るんだ。話はそれからだ。」 「は、はぁ・・・。」 それだけ言うと、声の男は電話切ってしまった。 とりあえず、電話ボックスに入ることにした。 声の持ち主を知らない自分がどうして、言うことを聞いたのかはわからない。 ただ、この声が僕にとって、悪いような気がしたんだ。 いや、違う。日常に飽きていた僕は、この声の言うことに従うことを 拒んでいなかった。これが日常を変えるようなできごとな気がしたから。 いや、そんな謙虚な言葉ではまとめられないか。 ただ。僕はいつもと違うことがしたかったんだ。 それがもし、危ないようなことだとしても。 電話ボックスに入る。雨で少し濡れてしまった。 携帯を見る・・・。電話はかかってこない。 やっぱりいたずらだったのかな・・・。そう思い始めたのは、10分ほどたったころだ。 濡れた髪はすでに乾いてきた。 もうそろそろ帰ろうと思ったそのとき、 電話ボックスの電話がなり始めた・・・。 最初はとまどっていたが、どうせ、声の男だろうと思い、出てみる。 「も、もしもし・・・。」 「小沢またせてすまなかったな。準備は整った。これから仕事をしてもらいたい。」 「は、はぁ・・・。まぁいいですけど。暇ですし・・・。」 「うむ・・・。それでは仕事の説明なのだが・・・。 「まず、電話のお釣り口の中に手を入れてみろ。」 「は、はぁ・・。」 つり銭口の中に手を差し込む、針金のよなものがある。 「なんか、針金のようなものが・・・。」 「そう、それを右に2回ほどまわしながら引っこ抜いてみろ。」 「はぁ。」 針金をさわり、右に2回ほどまわしながら、引っ張ってみる ガリッという音とともに針金が抜けた。 「よし、とれたようだな。んではその針金に巻きついてる紙みたいなものがあるだろう?」 「はぁ。まぁ。」 確かに針金に巻きついた紙が存在した 手で取ってみると、表面がざらざらしていて、黒い 「これは・・・。紙やすりかな?」 「ご名答、お次はその紙やすりをつかって。針金の表面を磨くんだ。」 「はぁ。めんどくさい気がしてきたんだけど・・・。」 「まぁ、いいから頼む。ちゃんと報酬はあるからな。」 報酬という言葉に乗せられたのじゃない でも、なんとなく実行している僕がいた ガリガリけずると 針金の表面が黒くなっていき その黒くなった点と点が線を描き やがて数字のような文字になった。 「なんか、文字でてきましたけど。」 「おぉ、よくやった。では次にその番号を携帯に打ち込むんだ。」 言われたとおり、実行する 最初に"0"が書かれていた。それを押す・・・。 「ちょっと。まった。」 「え・・・?」 「それ、もうちょっと削ってみろ。」 「は、はぁ・・・。」 ガリガリ・・・。 "0"かと思った数字は削ってみると黒い部分が増え、 "6"になった。 「本当の番号がでたようだな。その番号を打ち込むんだ。」 いつも思うが、監視してるとしか思えない口調だった。 「わ、かりました。」 64219412900199 どうみてもただの数字の羅列しかないように思えるのだが、 これは何かの意味があるのだろうか。 「打ち込み終わったようだな。そこで通話ボタンだ。」 「はぁ・・・。」 ピッ ツーツー・・・・。 ・・・。 プツン ・・・。 画面が消えた・・・。 「・・・。」 「・・・。」 「画面・・・。黒くなっちゃったんですけど。」 「・・・。ん?悪い・・・。テレビが面白くてな。聞いてなかった。」 「画面黒くなっちゃったんですけど!どうするんだよ!買ったばっかなのに!」 「あーそういうことか。大丈夫だぞ。ちょっと待ってろよ」 「はぁ・・・。」 黒くなった画面が白くなる。 ズーという音とともに ぐるぐる白い画面が着色される。 移った画面はゲームで表示されるような 簡単な地図のようだった。 「ん・・・。これは地図ですかね・・・?」 いつの間にか、この電話の男が見ているものと解釈している自分がここにいる。 「そうだ。まーその地図をめざせ。」 「はぁ。なるほど・・・。」 どうやらその地図は今いる場所から パン屋側の道へ戻り、 ぐるっと回って 真逆に位置する駅を示しているようだ。 はぁ、正直めんどくさい。 まーここまで付き合ったんだし、そろそろ軽くあしらうか。 「これは駅のようですねー・・・。」 「そうだ。あーそうそう。軽くあしらって帰ろうとか思うなよ。」 ・・・。 この男はボクの思考回路さえも読み取るのか・・・。 「小沢、そこの地図をめざせ。あぁ、傘なら、 その電話ボックスの裏にかけてあるやつを使ってくれ。 んじゃ、携帯に戻るぞ〜。・・・。ツー」 少しぬれながら外に出る。 裏にはちゃんと傘がかけてあった。 しかも、某ブランドの高そうな傘だ。 また携帯がなり始める。 即、電話に出る。 「そろそろ。慣れてきたみたいだな。学習能力があってすばらしい。」 「はぁ、それで、この傘なんですけど、いいんですか?これ有名なブランドの・・・。」 「あー。まぁ、この世界では価値があるんだろうけどなぁ 意味ないんだよなぁ。」 「は・・・。はぁ?」 本当にこの男は意味がわからない。 「んまー。ほしけりゃやる。だから、今は仕事をするんだ。」 「はぁ・・・。」 傘を取り、道へと出る。 「あー違うぞ。電話ボックス側の道を通るんだ。」 電話ボックスのほうを見るとたしかに、家と家の間にできた "隙間"のような道が存在する。 でも、さっきも思ったが、こんなところ初めて知ったような気がする・・・。 「そこをまっすぐ進めば、すぐ駅に着く。」 細道を通っていく。 ここは誰も知らないんじゃないかというくら殺伐としている。 家と家の間にできたと思われる"隙間" 管理さえ、されてなく。人も通らないと思われる 雑草の数。 雨が垂れ流しになった後。 そこを潜り抜けると、すぐに駅についた。 塀と塀の間で、木で影になっていて、 駅側から見たら、道であることさえわからないようだ。 ただ。これが道と言えるかどうかは不明だが。 駅につく。人が多くもなく少なくもない。 そんな駅だ。 通話中の携帯の画面を見る。 当然のごとく、地図が記されていた。 どんな仕組みなのだろう。 通話中でも見れるなんて・・・。 「おし。ついたようだな。」 「はぁ。そうです・・・。」 「んじゃ、駅員にこの電話を貸してみろ。切符売ってるとこにいるだろう。」 「はぁ・・・。」 この男は何をたくらんでいるんだ・・・。 「す。すみません・・。」 「はい?どうかなさりましたか?」 よく見かけるような、めがねにピシャっとした制服 まじめそうな中年男性の駅員だ。 「ちょっとこれを・・・。」 携帯を差し出す。 「?・・・。」 駅員さんは驚いた様子だったが、素直に携帯に耳を貸した。 ・・・。 待つこと数十秒 「っ!・・・。」 駅員さんの顔色が変わった。 「小沢さん・・・。ですか・・。」 「はぁ。まぁ、そうですけど・・・。」 「ご案内します。こちらです。」 「はぁ・・・。」 ホームの中から、事務所の中へとつれられて、 事務所の奥にある掃除用具のドアのような前にきた。 「この中です。ここからはご自分でお進みください。」 「はぁ・・・。」 ドアを開けるとそこは・・・。 ・・・。 「"事務所"へようこそ」 第1章   終  いつも私は2番だった。 常に2番だ。 小学校の運動会も 中学校での成績も。 高校での恋も・・・。  だから。今回は負けられない・・・。 今回のPWだけは・・・。 ReMasからの指名だ。 私は絶対勝つ。 そして、手に入れる。  最強の"武器"を。 だから私に、少しでいいから。 力をください。 いるのなら。神様 第2章「PW」 「ようこそ。"事務所"へ。」 そう言ってそこに立っていたのは電話の声の男だった。 「君は合格だよ。小沢。」 「はぁ。合格?」  さっき入ってきた事務所と正反対のつくりをしていて、 周りにはパソコンが10台ほど整列して置いてある。 オフィスチェアーがたくさんあり、その中のひとつにその男は座っていた。 「そうだ。君には仕事をしてもらうだけの価値と潜在能力が存在する。」 「今までのことはすべてテストだったんだ。」 「はぁ・・・。」  あれが、テスト?心理学的なものなのだろうか。 「疑ってるようだな。まぁ、無理もない。」 「はぁ。まぁ・・・。」 「小沢。君に聞くが。あぁ、座っていいぞ。」 立っている僕にイスを勧める。 立っている必要性もないので、素直に座った。 「小沢。ナノマシンって知ってるか?」 「ナノマシンって、漫画とかででてくる・・。」 「そう。あれを想像してくれ。」 「はぁ・・・。」 「お前らの血の中にはそれが流れてる。」 「え?・・・。」 「つまりだ。お前らにはそれが流れている。それが誰が流し始めたのかは しらない。だけどな。着実に血の中にはナノマシンがいるんだよ」 「ちょっと・・・。話が唐突すぎて・・・。」 「わからないか。つまりだ。流れているのに、誰もその事実を知らない。 どういうことかわかるか?」 「いや・・・。」 「人間には第六感というものがあるだろう?」 「はぁ・・・。」 「それをほんのすこしだが、脳から引き出しているのがナノマシンだ。 三途の川を渡るという表現は、あれは死んでいくときに、ある固定概念の 世界に逝ってしまう前にナノマシンが引き戻そうとしてる力を発揮してる 時に見る、夢なんだ。」 「・・・。」 「そのナノマシンの力を全部引き出せたらどう思う?」 「んと・・・。この世の概念では存在できないはずの何かを引き出せる?」 「そのとおり。それがPWだ。」 「PW?」 「この世の概念でとらわれていない、存在するはずのない。戦争。 それがプレイヤーウォー(Prayer war)なんだよ。 ナノマシンを最高まで能力を引き出すとお前らはウェポンとよばれる 武器を創造することができる。 それを使って戦争しているのがPW、んでその参加者のことを俺たちが プレイヤーと呼んでるわけだ。」 「え・・。でもそれなら・・・。」 「それなら、そのことが世界に知れ渡っていて、今の世界の概念となっている? か?」 「はい・・・。そうじゃないんですか?」 「そのとおりだな。だから、ナノマシンには自主保護機能がついている」